医療法人の形態と特徴について① ~社団と財団~

はじめに

医師や歯科医師が診療所を経営する際、個人開業だけでなく「医療法人」という形態を選択するケースが増えています。
医療法人は、医療を安定的に提供し、地域社会に貢献することを目的とする法人格であり、設立には都道府県知事の認可が必要です。

本記事では、代表的な医療法人の形態と特徴を整理し、制度を理解するための基礎知識を解説します。

医療法人の基本形態

医療法人は大きく二つに分類されます。それが「社団医療法人」と「財団医療法人」です。

① 社団医療法人
社団とは人の集まりを基盤とする法人で、出資者や社員によって構成されます。社員総会が最高意思決定機関となり、理事長や理事の選任もここで行われます。
一般的に、診療所や病院を開設する医師が中心となって設立する形態であり、日本における医療法人の大半を占めています。

② 財団医療法人
財産の拠出を基盤とする法人で、基本財産をもとに医療事業を行います。出資者の個人的関与は弱く、公益性の高い運営が求められるのが特徴です。
ただし設立数は少なく、特殊なケースに限られます。

出資持分の有無による区分

さらに社団医療法人は、出資持分の有無によって以下の二つに分かれます。

① 持分あり医療法人
設立時の出資額に応じて「持分」を有し、解散時には残余財産を分配する権利が認められます。しかし、医療法人の非営利性の確保、また相続税や贈与税の課税対象となるため、承継時の負担が大きいという課題があります。そこで平成19年施行の第5次医療法改正により、「持ち分あり医療法人」の新設は不可となり、また医療法改正以前に設立された「持ち分あり医療法人」は、「持ち分なし医療法人」への移行が原則となりました。(現状は例外的に経過措置の適用を受けて存在しています)

② 持分なし医療法人
平成19年の医療法改正以降、原則として新設できるのは「持分なし医療法人」です。解散時に出資者への分配権がなく、残余財産は国や地方公共団体などに帰属します。公益性が高く、現在の主流となっています。

医療法人社団の特殊な形態

医療法人社団の中には、さらに特別な制度が存在します。

① 特定医療法人
公益性が特に高いと認められた法人で、法人税率の軽減など税制上の優遇措置があります。ただし、役員報酬や配当制限など、厳格な条件を満たす必要があります。

② 社会医療法人
救急医療やへき地医療など、地域の医療に不可欠な事業を担う法人です。公的病院に準じた役割を果たし、税制優遇や診療報酬上の特例が認められます。

医療法人制度のメリットと留意点

医療法人化することで、次のような利点があります。

① 組織運営が明確になり、安定した医療提供体制を築ける
② 税制面で一定のメリットを享受できる
③ 医療事業の中断リスクを避けられる

一方で、医療法人は営利を目的とできず、剰余金の配当は禁止されています。法人の財産はあくまで医療のために使用されるべきものであり、設立後も行政庁への報告義務や定期的な手続きが課されます。

まとめ

医療法人制度は、医師や地域にとって医療を継続的に提供するための枠組みとして整備されてきました。その形態には、社団と財団、持分あり・持分なし、特定医療法人や社会医療法人など多様な種類があり、それぞれに特徴と留意点があります。

将来的にクリニックや病院を法人化する場合、どの形態が自院の運営方針に合致するのかを慎重に検討することが重要です。制度理解の第一歩として、本記事が参考になれば幸いです。
次回は、さらに社団医療法人の詳細な形態について解説します。

   
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