通知「医療法人の基金について」をやさしく整理

はじめに

基金とはざっくり言うと、ある目的のために集めて積み立てておくお金のことです。
医療法人の資金調達は「借入か寄附だけ」と思われがちですが、持分の定めのない社団医療法人には、もう一つの選択肢として「基金(拠出型)」があります。
基金は拠出者に対する返還義務を伴いながらも、剰余金の分配を目的としない仕組み。
非営利性を守りつつ、自己資金を厚くするための制度です。
対象は持分なし社団のみで、社会医療法人・特定医療法人は利用不可です。

まずは定款整備

基金を採用するには、「募集ができる旨」「拠出者の権利」「返還手続」を定款に明記します。
募集の都度、総額・現物拠出の有無と内容価額・払込(給付)期日などの募集事項を決定。
設立時に行う場合は、設立時社員の全員同意が要件です。

募集・申込・割当の流れ

応募者(申込者)には法人名、募集事項、払込取扱場所、拠出者の権利、返還手続を通知。
申込書には氏名(名称)・住所・希望額を記載します。
法人は割当額を減額することも可能で、期日前日までに割当額を通知します(総額一括引受契約の特則あり)。

現物拠出なら価額の相当性を証明

現物拠出を受ける場合、弁護士・公認会計士・税理士等の証明(不動産は鑑定士評価付き)が必要です。
ただし、市場価格のある有価証券など一定の場合は証明を省略できます。
拠出の履行と法人への債権は相殺不可、履行しなければ引受は失効です。

返還のルール(代替基金・利息禁止)

返還は定時社員総会の決議が必須。
返還できる総額は、貸借対照表上の純資産が基金(代替基金含む)等の合計を上回る範囲に限られ、期間も翌期定時総会前日までです。
違反返還時は受領者と関与役員が連帯弁済責任を負い、債権者も受領者に請求できます。
返還時は同額を代替基金として計上(取り崩し不可)、利息は付せません。

会計表示と手続の実務

基金と代替基金は純資産の部に計上し、返還債務を負債計上してはなりません。
制度導入後は、定款変更認可日から2か月以内に、認可書や定款写しを添えて所轄税務署へ届出が必要です。
合併では代替基金の額を引継ぐルールがあり、破産時の基金返還債権は約定劣後破産債権に位置づけられます。

まとめ

基金は「非営利性を守りながら資金を集める」仕組みです。
導入するときは①定款整備、②募集と適正評価、③返還ルールと代替基金、④会計表示と届出。
この4点をセットで運用することが肝心。将来、社会医療法人・特定医療法人へ移行の可能性がある場合は、早めに返還計画と定款見直しを描いておきましょう。

本稿が、基金制度の導入可否と運用設計の検討に役立てば幸いです。
必要なときに、行政書士として実務面から伴走します。

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