
はじめに
医療法人の決算後に必ず通る「事業報告書等」。本稿では、いつまでに・何を・どこへ提出し、社内外でどう公開・備置するかを、医療法とモデル定款の根拠に沿って実務手順で整理します。
期限の取り違えや様式の旧版流用を避け、スムーズに閉期できる体制づくりを狙います。
法的根拠と対象書類
医療法人は毎会計年度の決算について、事業報告書・財産目録・貸借対照表・損益計算書(以下「事業報告書等」)を作成し、監事の監査、理事会承認、社員総会(又は評議員会)の承認を受ける必要があります。
さらに、これら及び監査報告書、定款は事務所に備置し、適法な閲覧請求に応じます。モデル定款例でも同旨が明記されています。
期限まとめ:逆算スケジュール
提出期限は「会計年度終了後3か月以内」。事業報告書等と監査報告書を所管都道府県知事へ届出します。
工程は①決算確定→②監事監査→③理事会承認→④社員総会等の承認→⑤届出、の順に逆算管理が基本です。
監査報告書は会計年度終了後3か月以内に社内機関へ提出する扱いが示されており、監査・承認プロセスを前倒しで確保することが重要です。
提出方法:電子届出/紙提出の実務
届出先は主たる事務所の所管都道府県です。
提出様式や受付方法(電子/紙)は都道府県の運用差があるため、毎年度、所管の最新案内を取り直して適用するのが安全です。
監査→理事会→社員総会等の承認経路を確実に押さえ、提出直前での差戻しを防ぎます。
社内備置・外部公開の範囲
事業報告書等・監査報告書・定款は事務所に備置し、社員・評議員・債権者から請求があれば正当な理由がない限り閲覧に供します。
備置・閲覧義務は医療法・運営管理指導要綱で具体化されており、整備・保存も求められます。
よくあるつまずきと対策
① 期限誤認:届出は「会計年度終了後3か月以内」。監査・承認の所内工程をカレンダー化して前倒し着手。
② 様式の旧版流用:毎年度、所管が示す最新版様式・記載要領へ差し替え。
③ 監査の遅延:決算書(案)は理事会に諮る前に監事監査を経る運用が示されます。監事・会計担当者の事前アサインでボトルネック回避。
④ 備置・保存の不備:事業報告書、財産目録、BS・PLは「整備・保存」が前提。閲覧請求対応フローを明文化。
実務チェックリスト
① 決算確定日/理事会・社員総会等の承認日/届出締切(3か月以内)をひと目で追える工程表を作成。
② 監事監査の期限・報告先(社内機関)を明記し、監査資料の提出期限を前倒し設定。
③ 事業報告書等・監査報告書・定款の備置場所と閲覧対応担当を指定。
④ 最新様式の取得源(所管都道府県の案内)と更新チェックの担当者を固定化。
まとめ
要は「期限×様式×公開」の三点管理です。
会計年度末から逆算した工程、監査・承認ルートの早期確定、備置と閲覧対応の三点を毎年度のルーティンに落とし込めば、届出遅延のリスクを回避できます。
まずは所管ページで最新様式を確認し、今年度版の工程表を運用しましょう。
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