
東京都における医療法人の運営・管理について、「医療法人運営管理指導要綱」に基づきその要点を整理しました。本記事では、シリーズでその要点を整理し、わかりやすく解説します。
1.医療法人運営の基本 ~定款と役員体制の重要性~
医療法人を設立し、安定的に運営していくには、診療の質や経営的な安定性は言うまでもありませんが、法人そのものを法令に従って維持管理していくことは必須です。
その基盤となるのが「定款」と「役員体制」です。
これらは医療法人の骨格であり、設立時から常に適切に整備し続けることが求められています。本記事では、「定款」と「役員体制」を中心に、医療法人運営において押さえておくべき基本事項を整理し、行政書士がサポートできるポイントを具体的に解説します。
2.定款の役割と変更手続き
定款は医療法人の「憲法」ともいえる存在で、法人の目的、事業範囲、役員定数・任期、会議体の運営方法など、法人活動の枠組みを明確に定めています。
設立時にはモデル定款に準拠して作成することが求められ、記載内容に不備があれば設立許可は認められません。一度作成すれば終わりではなく、法人の運営状況や事業内容の変化に応じて定款を変更する必要が出てきます。例えば、分院の開設、附帯業務の追加などは定款変更の対象となります。その際には社員総会での議決を経て東京都知事への定款変更認可申請を行わなければなりません。
行政書士はこの場面で、定款変更議案の起案、議事録の整備、認可申請や届け出書類の作成を支援できます。診療に多忙な医師がこのような複雑な書類を作成するのは大きな負担かと思われます。専門家の関与によってリスクを最小化することが可能です。
3.役員体制の整備と理事長の義務
医療法人における役員体制は、医療法人のガバナンスを支えるもう一つの柱です。
理事3名以上・監事1名以上置くことが義務付けられています。理事長は原則として医師または歯科医師から選出される必要があり、例外的に医師以外の者を理事長とする場合は都知事の認可が必要です。
また、役員数が不足した場合には速やかに補充することが求められます。理事長は3か月に1回以上、職務の執行状況を理事会に報告しなければならない(ただし、定款で毎事業年度に4か月超える間隔で2回以上と定めた場合は、この限りでない)。こうした規定は形式的なものではなく、実際の法人経営の健全性を守るための仕組みとして重要です。
行政書士は、役員変更届の作成・提出、就任承諾書や履歴書の整理、社員総会や理事会の議事録整備などをサポートいたします。
4.ガバナンス体制の構築
「定款」や「役員体制」に関する義務を怠った場合、医療法人は所轄庁からの改善指導を受けたり、また過料の対象になったりする可能性があります。
そのため、医療法人の理事長や事務長は日常業務に追われる中でも、「定款」と「役員体制」の整合性を常に維持し、必要な手続きを確実に行う必要があります。
5.行背書士がサポートできる役割
行政書士は、医療法人運営において次のような場面で支援が可能です。
・定款変更に関する申請書類の作成支援
・役員変更届や就任承諾書の作成・提出代行
・社員総会・理事会の議事録作成と整備
・所轄庁への届出・認可申請の実務サポート
・登記に関して司法書士、税務に関して税理士、労務に関して社労士と連携した支援
医療法人の運営は「診療」や「経営」だけでなく、「法務・総務」の側面をきちんと整えることで安定します。行政書士は、こうした裏方業務を担うことで、医療法人が本来の医療提供に専念できる環境づくりを支援していきます。
6.まとめ
医療法人の運営において「定款」と「役員体制」は、設立時から常に正しく維持されるべき基本事項です。
定款は法人の憲法であり、役員体制は組織の骨格です。どちらも一度整えれば終わりではなく、法人の状況に応じて適時に更新・届出を行う必要があります。
日々の診療業務に多忙を極める中では見落としやすい部分ですが、専門家のサポートによってリスクを最小化することが可能です。行政書士は、医療法人が健全に運営される心強い伴走者として、定款や役員体制の整備を支援します。
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