
1.はじめに
診療所・クリニックを新たに開設することは、医師・歯科医師として、地域医療に貢献していく新たな一歩です。しかし、実際に診療所を開設するには建物や設備の準備だけでなく、数多くの行政手続きが必要となるため、先生方の負担も少なくありません。
そこで今回は、診療所開設に必要となる「全体の流れ」について整理し、開設を目指す医師・歯科医師の先生方にとって必要となる情報をお伝えします。
2.保健所への事前相談
診療所を開設するにあたり、最初に行うべきは保健所への「事前相談」です。開設を検討する建物の図面(平面図)や診療内容をもとに、保健所の担当者と具体的な打合せを行います。ここでは診療科目の標榜、施設名称の適切性、診察室や処置室などの配置が基準に合致しているかなどを確認されます。
特に、診療所の名称は「医療広告ガイドライン」に従う必要があり、関係法令に沿ったものであることが求められます。また、診療科目については、医療法、医療法施行令、医療法施行規則を確認する必要があります。
3.開設準備と設備要件
事前相談を終えた後は、実際の施設整備に移ります。診察室と待合室を明確に区画することや、必要に応じて処置室をカーテンなどで仕切れるようにすること、診察室に給排水設備を設けることが望ましいなど、細かい条件が定められています。
さらに、エックス線装置を設置する場合には放射線防護対策を施した専用の部屋が必要です(エックス線装置を設置する際は、開設届とは別にエックス線備付届の提出が必要です)。
雑居ビルを利用するケースでは、2フロア以上にまたがる場合、衛生面、保安面等で医療の安全が十分に確保できるか確認されますので、事前に相談しておく必要があります(ただし、患者が使用することのない施設は、この限りではありません)。
4.開設届の提出
施設が整い、開設日を迎えたら、10日以内に「診療所開設届」を保健所に提出します。提出は開設後でなければ受理されません。
添付書類としては、医師免許証や臨床研修修了登録証の写し、土地や建物の登記事項証明書、平面図や案内図など多くの資料が必要です。これらはすべて正副2部(届出内容と相違なければ、副本は返却されます。厚生局等への手続きには副本が必要となります)を用意することが求められています。
届出を行う際には、実地検査の日程調整が行われます。検査には管理者である医師が立ち会うこととされています。
5.実地検査
開設届を提出すると、保健所による実地検査が実施されます。ここでは、届出内容と実際の施設が一致しているかどうかが確認されるほか、以下の項目についても検査されます。
① 院内掲示
② 部屋の用途表示
③ 構造
④ エックス線装置及びエックス線診察室
⑤ 感染性廃棄物の処理
⑥ 消火設備
⑦ 医薬品の保管場所
⑧ 安全管理の体制確保
⑨ 広告
この検査で不備があると開設が遅れる可能性もあるため、事前に専門家にチェックを依頼しておくと安心です。
6.まとめ
以上が診療所開設に至る全体の流れです。
• 事前相談で方向性を確認する
• 設備を基準に沿って整備する
• 開設届を提出し、実地検査を受ける
開設準備は多岐にわたり先生方の時間的・精神的負担は大きくなりがちです。そこで行政書士が伴走者として、書類作成や法的要件の確認をサポートすることで、先生方は安心して診療所・クリニックの開設準備に専念できます。
次回は「必要書類の詳細」についてさらに掘り下げてご紹介します。
⇩