
はじめに
診療所・クリニックを開設するのに必要な書類は多岐にわたり、その準備は先生方にとって負担となることが想定されます。開設届を提出するのは、診療所の構造や設備に関する計画を立案し、さらに多数の添付書類を揃えなければなりません。
ここでは、東京都港区保健所の「診療所開設の手引き」を参考に、必要となる書類の概要を整理し、開設を検討する先生方に実務的なイメージをお伝えします。
開設届(第8号様式)
診療所・クリニックの開設の際に基本となるのが「診療所開設届」です。「診療所開設届」には以下の事項を記載します。
① 施設名称(医療広告ガイドラインに沿った名称であること)
② 所在地(ビル内診療所はフロア番号まで記載)
③ 診療科目(標榜できる診療科は医療法施行令等で規定)
④ 開設者・管理者の情報(住所・氏名・免許番号など)
⑤ 診療日・診療時間
⑥ 勤務する医師、歯科医師、助産師、薬剤師の氏名と勤務時間
⑦ 建物の構造や平面図、敷地の概要
この書類は診療所の基本情報を網羅的に記載するものであり、行政側が「医療法上の要件を満たしているか」を判断するための基礎資料となります。
必須の添付書類
開設届に添付する書類は多岐にわたります。代表的なものを挙げると次のとおりです。これらの書類は2部ずつ用意ください。
① 医師免許証・臨床研修修了登録証の写し
⇒開設者、管理者、勤務医全員分が必要。保健所で原本照合が行われます。
② 職歴書
⇒開設に至るまでの経歴を記載し、最終行に「○○診療所を開設、管理者に就任」と明記します。1部の履歴書については、写真を貼付してください。
③ 土地・建物の登記事項証明書
⇒自己所有の場合は法務局で取得、賃借の場合は賃貸借契約書の写しを併せて提出します。転貸借の場合には承諾書が必要となるケースもあります。
④ 建物平面図・敷地図・案内図
⇒診療所の位置関係や各室の用途が明示された平面図を提出します。特にエックス線室を設ける場合は、防護図(鉛の厚さなどを記載した縮尺図)を別途添付する必要があります(エックス線装置を設置する際は、開設届とは別にエックス線備付届の提出が必要です)。
⑤ その他必要に応じた書類
⇒ 麻酔科標榜の場合の許可証写しが必要です。
業務に従事する薬剤師、助産師がいる場合、免許証の写しを添付してください。
他院に勤務中の場合の承諾書を添付してください。
開設届と書類準備の注意点
書類準備で注意すべき点は「原本照合」と「契約関係書類」です。
① 原本照合では、管理者および診療に従事する医師・歯科医師の免許証や研修修了登録証を持参し、写しとの照合を行います。
② 契約関係書類では、建物の賃貸借契約が複雑な場合(転貸など)は承諾書が必要になる場合があるため、早めに確認しておくことが必要です。
また、届出書類と実際の施設構造が一致していなければ、実地検査で指摘され開設が遅れる可能性があります。そのため、設計図面と届出内容を細かくすり合わせておく必要があります。
行政書士ができるサポート
行政書士は、これら複雑な書類作成と添付資料の整理を代行・支援できます。具体的には、
① 診療所開設届の作成支援
② 添付書類一式の整備とチェック
③ 契約関係書類のリーガルチェック
④ 実地検査を想定した事前準備のアドバイス
といった役割を担うことができます。先生方が全てを対応するのは大きな労力を要します。医療専門行政書士に依頼することでスムーズな開設が可能になります。
まとめ
診療所開設に必要な書類は多岐にわたり、一つひとつに法的根拠と提出ルールがあります。医師としては診療準備に集中したい一方で、書類対応を怠ると開設スケジュールに大きな影響が出かねません。
行政書士は、その事務的・法的な部分を支援する「伴走者」として、開設を力強くサポートします。
次回は「実地検査と開設後の手続き」について詳しく解説いたします。