医療法人の形態と特徴について② ~社団医療法人の形態~

社団医療法人の多様な形態とその特徴

医療法人は、医師や歯科医師が安定した地域医療を提供するために設けられた制度です。
しかし一口に「医療法人」といっても、その形態には複数の種類があり、それぞれに設立経緯や特徴、メリット・デメリットがあります。

本記事では、社団医療法人の5つの形態を整理し、制度の理解を深めていただけるよう解説します。

1. 持ち分の定めのある社団(持分あり医療法人)

平成19年施行第5次医療法改正以前は、出資者が「持ち分」と呼ばれる財産権を持つ法人が主流でした。
解散時には残余財産を持ち分割合に応じて分配できる仕組みとなっており、出資者にとっては大きな権利を持つ点が特徴です。

一方で、この「持ち分」が相続や贈与の対象となるため、承継時に高額の相続税が発生するという問題がありました。
後継者にとって大きな負担となるケースが多く、結果として医療の継続性が揺らぐリスクもありました。第5次医療法改正以降は「持ち分あり医療法人」の新設が禁止され、既存法人のみが存続している状況です。

2.出資額限度法人

持分あり法人の問題を解消するために設けられた過渡的な形態です。解散時に出資額までの返還は認められますが、それを超える残余財産は分配できない仕組みになっています。

これにより、従来の持ち分による過大な財産権を制限し、公益性を高める狙いがありました。ただし、制度としてはあくまで過渡的な位置付けであり、将来的には「持分なし社団」へ移行していくことが基本とされています。

3.認定医療法人

認定医療法人は、「持分あり法人」から「持分なし法人」への移行を円滑に進めるために設けられた制度です。厚生労働大臣の認定を受けることで、移行に伴う贈与税や相続税の課税が猶予または免除されます。

この制度を利用することで、出資者やその相続人に過大な税負担を生じさせることなく、法人の安定的な存続と承継を実現できます。
実際、多くの医療法人がこの認定制度を活用して「持分なし」へ移行しており、地域医療の安定化に大きな役割を果たしています。

4.持ち分なし社団

現在の標準的な形態です。
社員は出資を行うものの、その出資に「持ち分」は発生せず、解散時の残余財産は国や地方公共団体などに帰属します。

持ち分がないため、相続や贈与に伴う課税問題は発生しません。
公益性を確保しつつ、法人の存続性を担保できることが大きな利点です。
第5次医療法改正以降に新設される医療法人は、すべてこの形態となっています。

5.基金拠出型法人

「持ち分なし法人」であっても、資金調達のために「基金拠出制度」を導入できるようになっています。社員が法人に資金を拠出し、法人の財政基盤を強化する仕組みです。

この基金は資本金のように扱われますが、「持ち分」とは異なり、解散時に返還されるのは拠出額の範囲内に限られます。
そのため、相続税の課税リスクを避けつつ、安定的な資金調達を可能にする制度として注目されています。

特に新規法人や設備投資の必要がある法人にとって、有効な仕組みといえるでしょう。

まとめ

医療法人の形態には、歴史的に設けられたものから現行制度に至るまで多様な形があります。

① 持ち分あり社団:第5次医療法改正以前に設立された形態

② 出資額限度法人:過渡的な形態

③ 認定医療法人:持ち分なし移行を円滑化する制度

④ 持ち分なし社団:現在の標準形態

⑤ 基金拠出型法人:資金調達と公益性を両立

いずれの形態も、共通する目的は「安定した医療提供」と「公益性の確保」にあります。

これから社団医療法人として法人化を検討する場合、「持ち分なし社団」で「基金拠出型法人」など、自院に合った形態を選ぶことが重要です。

制度の詳細や手続きには専門知識が求められるため、行政書士など専門家への相談をお勧めします。

    
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